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上村多恵子 詩集

   詩一覧

タイトル
更新日
無数の 苛テーション  〜無数の苛テーション〜より 2004/03/01
トータル・ユニット・ラック・システム 〜無数の苛テーション〜より 2004/02/01
流失 〜無数の苛テーション〜より 2004/02/01
すりがらすのむこう側 〜無数の苛テーション〜より 2004/02/01
の・ようなもの 〜無数の苛テーション〜より 2004/01/05
鏡には映らなかった(供法 繕世砲榔任蕕覆った〜より 2004/01/05
鏡には映らなかった(機法 繕世砲榔任蕕覆った〜より 2003/12/1
鏡を裏がえす 〜鏡には映らなかった〜より 2003/12/1
傷口 〜鏡には映らなかった〜より 2003/11/1
通勤鞄 〜鏡には映らなかった〜より
2003/11/1
深海魚族 〜鏡には映らなかった〜より 2003/11/1


   無数の 苛テーション  〜無数の苛テーション〜より

苛立ちが
うなり声を上げる
未整理の不協和音が
喧噪を増やしてゆく

消化不良の中で
こだわりだけが残る
無数の 不適合の毎日の中で
わからなくても
不安になっても
部分の迷路に立ち止まることはできない
無数の 苛テーション
無数の 事実

居ごこちの悪い火花が散る
わかりやすくない無数の 欲望
百花繚乱
無数の 音性多重
加えてマルチ複合立体構造


一つのものを極めれば
世界を包含する方程式は
どこへ消えたのだろう
きのう と
今日の間の
無数の 真実と
無数の 相対性の中で
うねりに巻かれた
無数の 苛テーション

わかりやすくない 苛立ちと向き合い
この無数の 苛テーション
の中で
さがし続けよう
僕の言葉(パロール)を


君がいてくれたから
僕はまっさかさまには
落ちなかった
けど愉快にいくカードを
落としてしまった

君をさがす
僕の旅は終わることはない

とり残され
時代にのけぞり
うづくまりながら
ボソボソと
又 歩き始めてしまっている

注:詩中の「言葉」の読み方は「パロール」です
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   トータル・ユニット・ラック・システム 〜無数の苛テーション〜より


大きなラック
小さなラック
みんな
引き出しの中に
マルクス主義もマルサス主義もマルセルせっけんも
PLOもILOも
二百カイリ問題もコレラ問題も
純文学もシュルレアリズムも事故のてんまつも
多国籍企業も一国籍企業も
ニューファミリーもオールドファミリーも
バーボンウィスキーもブランディも
さらに
さらに細かく
“千円と三千円のワイシャツはどうちがうのか”
“ひげソリせっけん27種を使ってみる”
“良いベッド悪いベッドはどこで見分ける”


さらに
さらに学問的に
“組織理論の歴史的名著、待望の
『オーガニゼーション』
近日発売”
つづいて
『システムの科学』
『組織と管理の基礎理論』
『ソフトウェア入門』
『細分化された労働』
発売中
大きなユニット
小さなユニット


そんなプラクチカルなファイルに
入らないものは
はみ出して
行き場がない
のでしょうか
いいえ
『その他』の
インデックスの中へ



やさしさのラックは
片すみへ押しやられ
ええ、
意地はるラックは
C号の 4号列です
デリバリーオーダー
かかりました



まず、
分類、
仕分けの作業から始めましょう。
そうです。
細分化するのです。
そうして、
そのユニット単位になったものを、
さらに、
用途、
性質、
機能、
効率、
能率、
かつ、
機動性、
経済性、
を考慮し、
システム化するのです。


そうして、
そこから、
分析、
研究、
展開を、
進めていくのです。
さしづめ、
実存主義は何号列でしょう。
愛憎もそのシステムにのられますか。



無限
という概念を
システム的に説明していただけますか


それと
あたし
ミルキィウェイを
流行りの
ユニット家具の中に一つ一つ
かざりたいのです

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   流失 〜無数の苛テーション〜より

海の拡がりに出会った


その前に
砂丘の嵐に出会った


その前に
太陽プロミネンスが燃えあがるのに
出会った


その前に
向日葵が太陽に恋焦がれている風景に
出会った


その前に
時が無数の悲鳴と共に遠ざかってゆくのに
出会った


その前に
白い丘を持つ女に出会った


その前に
青い目をした魚との交配に
出会った


その前に
白く光る昏々とした月に
出会った


その前に
椋鳥の鳴く沼の暗闇に
出会った

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   すりがらすのむこう側 〜無数の苛テーション〜より

目の前に
すりがらすがかかる
視野の中に
すりがらすがくもる
茫洋として
淡々としたソフトフォーカス


遠くに聞える
汽車のわだち
ぬれたレールの上
冷気に
神経が張りつめる
静けさに
内側の目が
澄みきる
形をつくり
精彩を放つ


椿の花びらが
風に舞う
音がする
くちびるが触れた色は
どこかでも
知っているような
どこでも
知っていないような


こうして同じような
昨日と今日とを
どこで区別できるのか
時の無数の点を
たどって行けば
やはり一本の線となるのか


焦点を合わせようと
すりがらすの目を
細める
その
さけめと
さけめの
クレパスを
のぞきこむように

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   の・ようなもの 〜無数の苛テーション〜より

ダイヤモニアだの
ダイヤ・オブ・ダイヤだの
限りなくダイヤモンドに近い
ダイヤモンド
の・ようなもの
原子の構造
分子の配列
みんな同じ
炭素からできていること
これ又然り


であるが
の・ようなもの
で・あって
で・はない


の・ようなもの

で・ある

本質的構造差異は
無い
にもかかわらず
在る
とすれば
物質の本質が持つ
価値とは
もちろん
社会経済の問題
と信じこみ

誇り
の・ようなもの

しかない 

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   鏡には映らなかった(供法 繕世砲榔任蕕覆った〜より

わたしは
わたしを
正面から視ることができない


鏡の中で
右に笑うと
右が笑い
左に拗ねると
左が拗ねる


対面した
わたしを視るために
さかさま鏡で
かい間視る


合わせ鏡はどうか
鏡の中の
その奥の
うらがえった鏡の向こうに
まったく別な女が
居る
というスリル
居ない
という失望


鏡がない時
北方モンゴロイドは
南方モンゴロイドを
自分と
どう
見分けたのか

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   鏡には映らなかった(機法 繕世砲榔任蕕覆った〜より

私はすでに死んでいる
そう言えば
脳のスイッチが
全部消滅して暗くなった
灰色がたちこめる
シナプスから流れ落ちるのは
一番新しい男の記憶
交わりの分泌液
何かに追われていたはずなのに
ここはもう急ぎ立てる者はいない
体が幻の虫に喰われてゆく


私は告げられた
出口を降りたところで
残念ですが
あなたは 左の方へと
視たような
後悔と安堵がくり返された
回廊をつたって歩くと
シャンデリアの向こうに
肖像画の中の男が一人
髪は床まで届いている
私の心臓は
まだ
かすかに動いています
声も聞こえます
あなたとも交歓できます
あなたは
とりわけ男達には
やさしかった
三日間の贈り物をやろう
ただ もう
あなたは
鏡に映りはしない


急がねばならなかった
ビルディングのそびえ立つ
巨大な組織
数パーセントのかけひきと
はら黒さの塩と
人間愛の胡椒をふりかけて
受付を通過したとこで御用
鏡に映ってないと
さわがれる
システムにからみとられた者の
おどろくばかりの頑さ
はじきとばされ立ちつくす


熱い視線をからめた情人
電話
そう電話
ウイルスをまきちらし
善意を確かめるために
そのつど不毛を確かめ
居ることを確かめるために
絶えず不存在証明をとり立てる
電話
背中に貼りついた
罪の刻印
愛の蝶番
ツーツーツー
<電源を切っておられるか
電話の届かないところにおられて
かかりません>
くり返される無機質音が
鏡に響く


もう時間がない
最後は
ナイフの男だ
合理性をくわえて生まれてきた男
風景と同化して
色を変える虫を
その固体そのものを浮き上がらせ
それしか視えない視覚構造を
内部に構築する
リベラルで無色な声で言った
そうか死んだのか
皆死ぬのだから
今更の交わりをしよう
もう体を痛めるほど
洗わなくて良い
汗の匂いのない
動物的な息づかいなどない
植物の めしべと
おしべが花粉を混合する
果てしない荒野が幾重にも連なり
酸素とガスに分解される
鏡をみると
男も映っておらず
あなたも死んでいたのだ
地球だけが青白い鼻汁垂らして
自転している

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   鏡を裏がえす 〜鏡には映らなかった〜より

鏡を裏がえそうとしたその時
上へ落ち
下へかけ登ったランナーがいた


アメーバーは細胞分裂し
プラスに減り
マイナスに増えた


樹林は うっそうと
前に縮み
後ろへ伸びた


老人は嬉々と子供へと成長し
子供は失望しながら老人へと退化した


誠意と正直は卑しめられたグレイジュ
嘘は尊ばれる高貴なパープル


愛していますから憎しみは強烈です


鏡を裏がえすと
未来から
過去へと 早送りされ
過去から
未来へと 巻き戻される


鏡が白く息に曇る
まだ生きているようだ
脳のレンズだけは
鏡の裏側で生活している


鏡を裏がえし
もう一度裏がえし
ようやく こわばって微笑する

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   傷口 〜鏡には映らなかった〜より

わたしの傷口は直りはしない


手厚く看護を受け
うすく瘡ぶたが膜をはった頃
肉の内側まで膿んでしまった体は
大気に触れると
しびれる痛みの快感を呼び起こす
憑かれた者のように
瘡ぶたをツメで引っかけ
すぐにはかしていまうものだから
赤いそれは顔を出し
倦怠のように紫色の腐臭を放つ


幾種のウイルスが入りこみ
拓榴の門から
冒された印から
体中がむしばまれていくのだろうか
それとも異物を
おどろきと苦痛に
分裂させながら
負の蘇生を試みているのだろうか


わたしは負の扉を開けてしまう
気がつけば
いつも鬩ぎの渕に立たされている


わたしの傷口は直りはしない
だからもう
これ以上の手当は辛いのです


この恥ずかしめられた
熱さの傷口を
いつかあがなえるものの
あることを信じて
浄化されてゆく日が
くることを信じて

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   通勤鞄 〜鏡には映らなかった〜より

何を忘れたかを想い出すのに
費やした時がまわりはじめるのと
いてもたってもいられなくなり
通勤鞄の点検をはじめる


通勤鞄の傷みが速くなった
くたびれた形に
とめ金がゆるい
この疲弊状態からすると
償却は定率の五倍増しで力つきる


時代のカーテンに針で突くような企画書は
フィットで収まるけれど
出してもすぐ又鞄に入れなくてはならない
しかし期日までに提出しなければ
人生の重加算税が待っている
耳を圧迫するイヤリングは
いつも片方だけ底にころがり
遠くの音への羨望をふさぐ
アドレス帳の中が
空っぽになってしまったら
いよいよ明日から前世の恋人の
名前を調べよう
「地球にやさしい」再生紙で
つくられた名詞は


鞄の中で縦皺をつのらせている
昨日と今日の区別を
ファウンデーションでぬりこめると
仮面劇の幕が降ろされた


さあ「協業化の飛躍的向上」のプラン書と
皇大神の地鎮祭への寄付の払込票とを
鞄のそのチャックの中へ一緒に入れるのだ
春の化粧品の案内のハガキと
ニッポン再構築のパンフレットと
クリーニング代の領収書を点検し
獣の皮に
ブランドマークをはりつけた鞄を下げる


何かを忘れているのだけれど
空気のさけ目からまき戻されないまま
通勤鞄を両手で高く持ち上げ
強くゆすってみる

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   深海魚族 〜鏡には映らなかった〜より

パン屑を投げただけで
深海魚族の群につつかれた
大都会のプラットフォームで
背後から押されて
つんのめる角度で沈みこむ
いやこれは
上海の背むしの大道芸人や夜店が並ぶ
曲芸師の小屋の色どり
眼前に現れたのは
何本もの白い骨
ボートピープルの少女が
海賊に輪姦されるより選んだ
洞窟の岩陰で
人喰い蟹にちぎられた
膝から下の脚
その骨の間を透きとおった魚族が
背骨を浮かびあがらせて泳ぐ
赤い魚族は内臓までもが赤い
青い魚族は神経までもが青い
黄いろい魚族は脳みそまでもが黄いろい
交差点にはシグナルがないが
巨大な立体システムに生息する
マントルにだけは近いので
地殻の微動だけは察知する
マグマが噴き出す日は近いと


海の階段を降りてゆくと
正座のおとぎ話を信じられなくなる
時の潮流に洗われて
水流がきしみながら
きのうと今日のつめぎを廻る
薄い陽光にさえ
目玉がとび出る深海魚族と交わり
叢林に身をゆだねながら
忘れられた腐臭の
にぶい泡を吐く

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